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藤本タツキ×米津玄師『チェンソーマン』対談
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藤本タツキ -
米津玄師 -
林 士平
TOPICS
林:こんにちは。チェンソーマン編集担当の林です。劇場版『チェンソーマン レゼ篇』公開記念スペシャル対談ということで、お二人にお越しいただいております。ご挨拶お願いいたします。
藤本:藤本です。よろしくお願いします。
米津:米津玄師です。よろしくお願いします。
藤本:よろしくお願いします!
林:本当にはじめましてのお二人で。
藤本:初めましてです。
米津:初めまして。
林:アイドリングトークっていうことなので。緊張してるんで、二人とも。先に飲み物の注文から。
藤本:はい。
林:米津さん、何頼みますか?
米津:クリームソーダを。
藤本:じゃあ僕も同じものを。
林:クリームソーダ2ついただいてもいいですか。あ、色めっちゃあるんですよ、クリームソーダ。
藤本:緑で。
米津:俺も普通ので。
林:真っすぐな緑で。じゃあ僕、透明もらってもいいですか?
藤本:ははは。
林:どうですか、顔合わせ。初めてお会いしてみての印象とか。難しいと思いますけど…。
藤本:いや、もう僕はだって。テレビとかでいっぱい見てるから。なんかこう米津さんと会う前にPVとか見て。あー目の前にいるって。同じ人がいるって思って。PVとか見てると、こう、めっちゃ破天荒だから。もしああいう感じで、でかいチャリとか乗ってきたら、やばいと思って。
米津:全然そんな。ええ。
藤本:すごい。緊張してます。
林:藤本さんは、お顔をお出しになられてない方なので、米津さんからすると、こういうお姿だっていうか。
米津:はい。
藤本:すごい僕は米津さんのことを、結構ずっと好きで。
米津:あ、本当ですか?
藤本:曲も聞いてたんで…。めちゃくちゃ光栄です。
米津:自分も『チェンソーマン』ひいては『ファイアパンチ』の頃から、ずっと読ませていただいてて。殆ど同世代ですよね、
多分。同い年くらい…。
林:藤本さん、いつもご自身の年齢を忘れられてて。多分31だと思う。
藤本:1か2か3のどこか。
米津:1992年?
藤本:2か4なんですよ。偶数だってことだけ覚えてる。
米津:ああ。でも多分ほとんど同世代。
藤本:そう、同世代ですよね。
米津:ってこともあって、やっぱこう、凄い人が現れたなっていうのが。
藤本:いや、もうそんなの。
林:21がデビューでしたね、漫画連載は。
米津:なので、今日も“どういう人となりなんだろう?”って。その全く喋ってるところとか見たことなかったんで。だいぶ緊張はしています。
林:ふふふ。
藤本:僕は大学生の頃から聞いてるんで。もっと年上だろうなって思ってたんですけど。全然。
林:かなり歳は近い。
米津:そうなんですよね。
林:同年代だとは思いますね。
藤本:はい。
米津:ははは。
藤本:ははは。
林:ふふふ。固いですよね。二人ともね。緊張が僕に移ってくる。
藤本:いっぱい話したいことはあるんですけど。
林:じゃあ一個ずつ話していきましょう。一応じゃあ、あの飲み物くるまでの間、今回、冒頭にありましたが、劇場版『チェンソーマン レゼ編』の公開記念ということで、あの公開して一週間ちょっとだとは思うんですけども。
林:ちょっと話しやすいように質問していきますね!米津さん、『チェンソーマン』という作品の出会いを改めて、あのお伺いできたらと思います。
米津:そうですね、『ファイアパンチ』1話がネットで公開された時に、ネット上でざわざわ騒ぎみたいになって、それに乗じてって言うとあれですけど、あの読んでみたら“すごいのが始まったな”っていう、とんでもない漫画が始まった感じ。衝撃を受けたんですね。それで。ああなんかこれは今まで見たことない。非常に新しい、風が吹き始めたのかな?みたいなことを思って。ちょっと調べてみると、藤本さんがほとんど同世代であるって言うのが分かって。多分あの時ってお互い20代中盤くらい?
林:そうですね、23歳で連載開始でしたね。多分1話描いてるところは、22歳くらいだったと思うんですけど。
米津:そんだけやっぱ若い人が、漫画っていうジャンルの中でも、ガーッとこうデビューしてくる、表に現れるような時代になったんだなっていう、なんかすごい衝撃を受けたんですよね。
林:はい。
米津:自分も昔、ほんと子供の頃に漫画家になりたかった人間なんで。ほとんど自分と歳も変わらない人間が、これだけ衝撃的なものを描いてるっていう事実に、やっぱものすごく刺激を受けたというか。全然やっぱ音楽と、ジャンルは違いますけど、負けてられないというかね。自分も頑張らなきゃ、みたいな気持ちになったのをすごい覚えてるんですよね。で、そこからまあ『ファイアパンチ』の連載を追って、それが終わって『チェンソーマン』が始まるってなった時に、またそんなやっぱ第1話で『ファイアパンチ』で食らったような衝撃みたいなのが、“ゴーン”ってこう飛び込んできて。なんか。やっぱりものすごい人だなっていう。なんか一重に、その言葉に尽きるんですけど。その1話のあのゾンビが群がってきて、そこでチェンソーマンが高笑いする見開きのページとか。ああ、これはまた、ものすごい物語が始まっていくんだろうなっていう。そういうワクワク感がすごい強くあったのを、覚えてますね。
林:両作とも連載一話から追いかけていただいてありがとうございます。
藤本:ありがとうございます。
林:一番最初のなんか印象、チェンソーマンって作品の印象ってなんかある…あ、ちょうど。
米津:あーすげえ。(クリームソーダがくる)
林:はい。
藤本:ありがとうございます。
米津:なんか…。クリームソーダがめっちゃ飲みたくて。
林:あはは。
米津:最近。コーラにハマってて。
林:おお、なるほど。
米津:こんな変な話になるんですけど。
米津:炭酸が飲めるようになったんですね。
林:今まで苦手だった?
米津:子供の頃に炭酸があんま飲めなくって。喉がイガイガして、なんでこんなもんがあるんだろうくらいに思ってたんですけど。コーラとかそういう炭酸系の飲料みたいなの。酒は結構飲んでたんですけど、それ以外はだいぶ敬遠してたのが。大人になって、改めてコーラとか飲んでみると、激烈にうまくって。
林:ははは。
米津:クリームソーダって、見た目めちゃくちゃいいじゃないですか。
藤本:すごい好きです。
米津:でも炭酸が飲めないってことで、見た目めっちゃグッとくるのに、あの飲めないっていうもどかしさみたいなものを感じてたんですけど、コーラが好きになった今だったら、これをめちゃくちゃ楽しめるんじゃないかっていう。
林:なるほど。
米津:喫茶店来るんだったらこれ飲みたいなってずっと思ってた、っていうのがありますね。
藤本:子供の頃観て、よく分かんなかった映画とかが、こう大人になってみて、めっちゃ面白かったじゃんみたいな。そういう感じですよね。
米津:そうですね。今これが来て、すごい嬉しいです。
林:クリームソーダを飲みながら、質問させていただきますね。
米津:すみません、ごめんなさい。
林:全然全然。
林:さっき、“すごい人が現れた”と藤本さん作品に対するその最初の印象でしたけど、チェンソーマンって作品に関してはどのようなところに惹かれたりとか、いいなあっていうのを思っていただけたのかなっていうのは?
米津: 本当に最初から思い返すと。まず一番最初は『チェンソーマン』のキャラクターデザインというか。変身して、あの姿になる時に、あれのかっこよさ、あの頭部ものすごいかっこいいし。何よりあの…。腕を一本ずつ引き裂くように体の中から出てきて。で、なんかこう、どっかそれが自傷行為のようにもなってるっていうのが、他でやっぱ見たことがない表現だったし、およそ、チェンソーをこう擬人化しようと思って、ああはならないだろうっていう感じがすごくあったりして。それもすごい衝撃的だったところがあって。ものすごくダークでシリアスでいながらもすごく突飛な感じがあったりして。で、どっかポップにも見える気がするんですよね。そのバランス感というか、塩梅みたいなものが、そこにあって、すごいデザインだな、すごい造形だなと思ったのが一番最初にすごいと思ったところの一つなんですけど。それを改めて振り返って、物語を追ってみると、『チェンソーマン』っていう漫画の、ものすごい背骨になってるというか。ダークでシリアスでありながらも、すごいポップで。そういうものがあそこに一発で現れてる感じがあって。どんどん読めば読むほど… 物語の背骨だなっていう感じがして。すごいなって。
藤本:ありがとうございます。
林:チェンソーマンって企画、一番最初、藤本さん、デザインファーストでしたもんね?
藤本:そうですね、はい。
林:そこから企画はスタートしていらっしゃるので。テレビシリーズOPを担当した際の、エピソードや反響など、お伺いできたら。
米津: アニメ化するのであればやりたいなぁって。曲を作れるのであれば作りたいなとずっと思ったんで。
林:はい。
米津:実際作らせてもらえることになった時は、ものすごく嬉しかったですね、単純に。毎回アニメだったりドラマだったりの曲を作るときは、よそ様の子を預かるような気持ちになるというか。作り終わったあと、果たしてこれで良かったんだろうか?ってものすごく不安になるんですけど。「KICK BACK」を作ったときもチェンソーマンのための曲でありたいというのが大前提として。とはいえなんかこう、自分の個人的な趣味みたいなものが、すごくそこに出てしまったので、よりこう、 “これ大丈夫なんだろうか?”みたいなのがすごく強くあったんですよね。なので、結構不安だった記憶がすごい強くあるんですよ。作ってる時はすごく楽しかったんですけど。実際にあのチェンソーを、レコーディングでふかしたりも。
林:はい。
米津:それもあの。電動で試したんですけど。電動だと。音だけ聞くと、掃除機の音と変わらないんですよ。やっぱガソリンで動くやつじゃないと、我々が聞き馴染みがあるあの音にならないっていう。なるほど、そうなんだみたいな。そういうことやってたのすごく楽しかったです。
林:聞いた時に藤本さん、その時のご感想って覚えていらっしゃいます?
藤本:えっと、米津さんがそもそもチェンソーマンのオープニング・テーマを作るって聞いたときに。
林:うんうん。
藤本:「マトリョシカ」を聞いてたんで、あ、米津さんなら“「マトリョシカ」作ってるからできるな”って思って。「KICK BACK」とはまた別の、違う方向はあったと思うんですけど。エッセンスはやっぱりちょっと入ってると思ってて。米津さんの歌ってすごい、聞いた人にとって分かりやすいというか、作品のガイドラインとなるような曲を、たくさん作っていらっしゃると思うんですけれども、それをもしかしたら『チェンソーマン』にした時に、“すごい説明的すぎになってしまうのかな?”って思ったんですけど。米津さん拾うのが上手いから。ただ案外やっぱり、上手く拾う部分は拾って、なんかいい意味でチャランポランな部分を、ちゃんと「KICK BACK」でも入ってて、めっちゃ良い曲になってるなって思いました。
米津:あ〜ありがたいです。
林:実際に作品を曲が広げてくれたって側面がすごいあるなとは思いますね。…いやぁ…なんか2人ともすごい今日カタイっすね?
米津:あはは。
藤本:あはは。
藤本:だって、だって、今、米津さんがすごい自分の作品、すごい褒めててくれてて。
俺もいっぱい褒めたいっす。いっぱいすごい聴いてるから。
林:そうですね。いや、なかなか会うことがない二人だから。初めて会うとちょっと…なんですかね…ちょっと切っ先をこう。
こう距離感を測る状態。
林:きっと本当はこう心の根っこでは、話したいことや聞きたいことがいっぱいあると思うので。聞いてってほしいですけど…。
林:漫画と音楽で表現違いつつ、2人とも同世代で、各ジャンルで最前線で活躍していらっしゃると思うんですけども。小さい頃に影響を受けた映画とか音楽とか漫画とか、多分世代が近いので近いものを見ていらっしゃると思うんですけども、主にこういうのを見てきたんですよねってあったりします?
米津:ジャンプで言うと、本当に『NARUTO -ナルト-』がすごく好きで。ナルトが、少年漫画の原点みたいなところがあって。小学生の頃とか。ナルトの模写とかすごいよくやってたのは覚えてますね。
藤本:ナルトめっちゃ絵うまいですからね。
米津:あ、そうですよね。
藤本:なんかあの、そんな線の本数は多くないですけど、作者がめっちゃデッサンできる人だから。シンプルな線で、こんなに立体的な絵が描けるんだと思って。だから逆に模写するの難しかったから、線が多い絵とかは、線の多さでどうにかしてるんですけど、ナルトは凄いうまいですから。
米津:『NARUTO -ナルト-』の単行本を読んでて、合間合間に岸本(斉史)さんのエッセイみたいなのが挟まってて。
藤本:弟が車買ったみたいな。
米津:あ。そうそうそうそうそう。その時は漫画家になりたくてずっと志してたんですけど、それ読んでると、漫画家ってえらい大変なんだなっていうのを知って。押し入れでずっと寝てるみたいな。作業が煮詰まってくると、アシスタント同士が奇声を上げ始めるみたいな。小学生からすると、とんでもない職業なのかもしれないみたいに思って、ちょっとその…。漫画家になるというブレーキがかかったのは、すごい覚えてるんですよね。
林:たしかに。まあ、当時の週刊連載、本当に合併号も少ないですし、お休みもほとんどされてないんで、お体とかお心をね、ちょっと崩しがちな方は多かったって気はしますけどね。
藤本:でも全然音楽作るって仕事も、大変そうだなというふうには思うんですけど。
米津:いやーどうでしょうね。でも、漫画家さんに比べると、もう本当に微々たるもんですけど、たまに絵描く時とかもあったりして。
両方比較してみると、絶対、絵を描く方がしんどいんですよ。個人的には。
藤本:ほー。
林:ほー。
米津:ずっとこうなってる(絵を描く姿勢をとる)から、背中や腰とか凄いバキバキになるんですよ。
林:腰とか肩を…バキバキになる方が多い印象はありますね。メンテナンスしないと…スポーツ選手に近いのかもしれないですね。
米津:身体的な負荷っていう意味では、ものすごいものがあるなあって。自分程度の作業量でこれだったら、週刊連載だとものすごい大変だろうなってすごい思いますけどね。
林:どうですか?
藤本:好きなことだから。もちろん嫌ですけど、寝れないとかっていうの。なんかあの人と同じ、“あの漫画家さんと同じ経験してる”みたいなことを思うと、ちょっと嬉しいなあみたいなみたいなことは思ってました。
米津:それはとてもいいですね。
林:藤本さんは幼い頃、漫画は何を主に読まれてたんですか?
藤本:漫画はいろいろ読んでるんですけど、どっかの雑誌とかに限らず読んでて。多分アニメは僕、結構クレヨンしんちゃんとか、ドラえもんとか見てて。そこらへんをすごいたくさん。ジブリとかディズニーとか、あまりそのマニアックなものとか見ずに、みんなが見てるようなものを見てました。
林:音楽は?幼い頃、聴いてた音楽。幼い頃って難しいですけど、初めて買ったCDとかって覚えてます?
藤本:僕、覚えてるんですけど、超恥ずかしいですけど…。あの「創聖のアクエリオン」買いました。
林:おー。
米津:おー。
藤本:「一万年と♪」ってやつ。
米津:あ〜はいはいはいはい。
林:中学生ぐらいってことですか。
藤本:はい。
林:あ、なるほど。
米津:すごいいい曲ですよね、あれ。
藤本:恥ずかしいんですけど。
米津:いやいやいや。
林:米津さん、覚えていらっしゃいます?
米津:俺は、めちゃくちゃ覚えてて。「だんご3兄弟」
藤本:あー。
林:あー。たしかに、100万枚以上売れましたもんね。
米津:その当時、「モンスターファーム」ってゲームがあって。
藤本:あっ!僕もやってました。2ですか?
米津:あ、2です。
藤本:僕も2です。
林:世代ですね、これは。はい。
米津:で、めちゃくちゃそれにハマってて。とにかく、CDとかを。
藤本:「だんご3兄弟」って、専用のモンスター出ませんでしたっけ?
米津:そうでしたっけ?
藤本:専用のモンスターが出るCDがあって、それをTSUTAYAに借りに行くみたいなことを。
米津:で、なんかCDをとにかく集めたかったんで、大流行りしてて。「だんご3兄弟」が。とにかく「だんご3兄弟」をまず買おうと思って、買ったのが、一番最初のCD。
藤本:へー。
林:あはは。近い世代っちゃあ近い世代なのかもねえ。
藤本:ちょうど多分世代ですね。
林:多分そうだろうなと思います。逆にちょっと、あんまり聞かれないかもしれないですけど、最初に映画館で見た映画とかって覚えてます?
藤本:僕はクレヨンしんちゃん。
林:あ、やっぱ劇場版のアニメーション。なるほど。
米津:なんだっけなあ。デジモンかもしんないです。
林:なるほど。
藤本:あの細田守版のヤツですか?
米津:はいはいはい、そうですそうです。
藤本:あれ、めっちゃいいですよね。
米津:めちゃくちゃいいんですよ。
藤本:コカトリモンがこう、電気の技を放ってからちょっと遅れて。電気が“ピシャーン”ってなって、“うぉー!”これが、“これが攻撃ってやつか!”みたいな。これを、俺はやるぞ…って。もし作り手になったら。
米津:やっぱすごい、世代が一緒だと。観てるものが…。
藤本:あの、遊戯王も一緒にやってませんでしたっけ?
米津:あーはいはいはい。ハハハハ
藤本:ブルーアイズを鎖で三体連結させて、戦うんですよね。
林:でもほんと同じぐらいの世代で。小説とかって覚えたりします?大体課題図書だけど、自分で買ってめちゃ記憶に残ってる小説とかって、覚えてたりします?
藤本:買ってない。借りてた。
林:図書館で借りて?
米津:なんか家にあったっていうのが。ヘミングウェイの「老人と海」。
林:「老人と海」。
藤本:それがあるんですか、家に。
米津:あーいやでも、そんな読書家とかそうでもないし。ごく一般的な家庭だったんですけど。多分父親の趣味だと思うんですけど。
藤本:すげえ。
米津:なんか分かんないけど読んで、なんだこの話みたいなことを思ってたのは、すごい覚えてますね。
藤本:へー。
林:藤本さんは図書館で借りた本で記憶に残ってるのは。
藤本:銀魂の小説版があって、それを。
林:図書館で借りれるし。しかも学校に持っていっても怒られないですよね、小説だから。はい。
藤本:ちょっとこれ「老人と海」って言われた後…なんか…もっと…「ダレン・シャン」とか。
米津:あはは。
林:ありがとうございます。お二人ともクリエイターとして活動を始めた、ようするに、音楽家として、漫画家として、活動はじめたきっかけって、覚えてらっしゃいます?
米津:インターネットが家に開通したというのが、ものすごく大きかったと思うんですよね。小5ぐらいの頃にパソコンが来て、それを使ってて。お絵かきBBSとかそういうのに参加して、そこで絵描いたりとか。その当時カービィとかすごい好きだったんで、めっちゃカービィとか描きまくったりして。あと、Flashアニメって。
藤本:見てました。おんなじ世代だ。「Nightmare City」とか見ました?
米津:なんかすごい戦うやつですよね?そう、Flashアニメがめちゃくちゃ好きで、いろんなの見たりしてて。それがすごい衝撃、刺激的だったんですよ。片田舎で育った人間なんで。こんな世界あるんだみたいな。よくよく思い返してみると、今やってることと、そこでやってたことが全く変わらないんですよね。
林:絵を描いて。
米津:そうそうそうそう。絵描いて、曲作って、MV作って。だからライブが増えたぐらいで。ほとんどその頃と変わってなくて。
林:初期衝動のままというか。
米津:子供のまま生きてきた人生かもしれないと思うような時はありますね。
林:藤本さんはペンを持ったというか、漫画?
藤本:全く同じで。僕は中学生の時なんですけど、マウスでキングダムハーツの絵を書いて、キングダムハーツお絵かき掲示板っていうのがあって、そこに投稿して、恥ずかしくてすぐ消して、っていうのを繰り返してました。本当に同じ世代だからね、“ああ同じことしてる!”って思って、すごい感動してます。
米津:すごい、いい。僕も一緒ですね、それはね。
林:そうですね。藤本さん、歌をうたってた時期は。
藤本:あれは。あれ、俺かなり気に入ってるんですけど、なんか…あんま評判良くないのかな?あれ、なんか。
林:米津さん、ご存じないかもしれないんで、簡単なご説明を。
藤本:でも、あれ…。
林:あれ、なんか昔、中…あれ高校生ですか?歌われてるのネットに上げられてて。
藤本:そう、高校の時に友達と、あの桃鉄をやって、負けた方が歌を考えてYouTubeにあげるって。でもそれだとなんか、コメントつかなくて寂しいから、ちゃんと、“上げたら絶賛コメントしてね!”っていうふうにして上げて。再生数18とかだったんですけど、今こう広まってめちゃくちゃ再生数…はい。
米津:あ、そうなんだ。笑
藤本:あれがまあ。残ってて…ネットって怖いですね。
林:デジタルタトゥーってこういうこと言うんだって。
米津:残ってるんですね、そういうのがね。
林:ちょうどたぶん、2人の世代、ネットに繋がった世代から、多分ニコ動やニコ生があって。ご自身でそこに参加すると、顔とか声とか出されてる方いっぱいいらっしゃったので。
藤本:米津さんもですけど、ニコニコ動画って本当にみんな通ってたと思う。
米津:そうですね。
藤本:米津さんみたいに歌を作ってニコニコ動画にあげるってことはすごい労力だから、そんなのできなかったんですけど、見る側としてみんな見てたと思うんです。初音ミクの曲とかも、全部は聞かないにしても、ランキング上のやつは聞くし、みたいなことしてると思ったらなんか、エンタメの楽しい部分が全部ニコニコ動画にあった時代が、僕はあると思ってて。
米津:ああ〜。すごく楽しかったですね。過去形みたいな感じになるのはあれですけど。色んな人が勝手にいろんなことやってたんで。そこの、ごった煮感みたいなのが。やっぱやってて。自分で参入してから、すごい影響を受けましたし。自分みたいな人間の受け皿になってくれたみたいなね。みんなで公園の砂場で遊んでるみたいな、そういう感じがあって、すごく楽しかったですね。
林:そうですね。あの場で顔も合わせずにこう一緒に作ったりとか、プロジェクトやったりしてらっしゃる方が、いっぱいいらっしゃったなって印象はありまして。僕はもうその時働いてたのかな?作家さんとよく生放送してましたよ。
米津:あー。
林:一円も宣伝費かからないってことで。地獄のミサワ先生とよく生放送を。
藤本:なんか、そういう場。今って宣伝はツイッターとかって、そういうのでってなってるんですけど、本当に一時期全部ニコニコ動画にあった時期があって。
林:そうですね。
藤本:なんかアニメもすぐだったら。ニコニコ動画で最新話だけ上がってたりして。
林:その活動で、手作りなものが始まったと思うんですけど、何か転換点ってあったりしたんですか?ここが転換、藤本さんだったら漫画賞なのかもしれないですけど。
藤本:そうですね、僕は漫画賞ですけど。米津さんはニコニコ動画で?
米津:そうですね。やっぱりボーカロイドに出会ったっていうのは、とても大きかったと思いますね。地元が徳島県なんですけど、そこから学校に行くために大阪に出て行って。なんかその瞬間に出てきて、初日みたいな時に。インターネットになんか繋げて見てたら、初音ミクみたいなの流行ってるみたいな。(大阪に)出て行った瞬間だったんですよ。だからそのタイミングもすごい良かったと思うし。まあもうそれにハマり込んじゃって、学校も途中でやめちゃったんですけど。
藤本:へー。
林:へー。
米津:だから、ものすごい、運が良いというか。そういう感覚がありますね。
林:ツール。そうか。藤本さんは、マウスで描いてたけど、急に。その?どこで?
藤本:いやもちろん、漫画を本格的に描くって言うんだったら僕は板タブで。今は液タブで書いてるんですけど。多分、ボーカロイドもそうだと思うんですけど。僕のデジタルクリップスタジオとかも、当時はクリップスタジオって名前じゃなかったんですけど。一度買えば、長くお金かからずに使用できるので。やっぱり金銭的な面で、アドバンテージがあったんで。アナログってめっちゃ金かかるんで。
林:いやー、アナログって1作品仕上げるだけでもトーン代だけでも数万飛ぶ人は飛ぶんで。
藤本:たぶん初音ミクも同じ感じだと思うんですよね。
米津:そうですね。
藤本:いろんな長く続けているとお金かかったりするところを、1回の購入で色々。無料になると言うか。それがやっぱ、夢を追いやすいというか。
米津:いや本当に。初音ミクが…。いくらでしたっけ?1万円ちょいぐらいで買えて、当時使ってたDTMのソフトとかも、ほとんどフリー素材というか。
藤本:へー。
林:へー。
米津:昔使ってたSONARってやつがあるんですけど、それも、そんなに高くなかった記憶があるし。ネットを探せば、誰かが作って無料で公開している音出す機材みたいなものがいっぱい転がってるんで、なんかそれだけで、ぜんぜん音楽作れるみたいな時代だったんですよね。こっから自分より一世代前とかになってくると、とにかく金がかかってしょうがない分野ではあったんですよ、デスクトップミュージックって。それが、そのくらい楽になってくれたのは、自分にとってものすごくありがたかったかっていうのは、すごくありますね。
藤本:同じです。本当に。
林:似てますね。すごい世代が近いから。
藤本:世代が同じだから、ツールでも。トーンとかも無料ですからね。1回買えば。
林:そうですね。みんなほんとトーンで喘いでて、結局斜線とか書き上げでどうにかなるべくトーンとか使わない場面のを作る方も若い子には多くて、その当時は。
米津:なるほどね。
林:覚えてますね。トーン買って送ってましたからね。若手の作家とかにね。
藤本:ふーん。
米津:へー。
林:最近触れた作品に印象に残ってるものはあります?映画・音楽・アート・小説などで。お忙しいのでそんなにたくさん見れてないと思うんですが…。
藤本:僕たくさん見てます!
米津:あはは。
林:あはは。そんな食い気味でなんですか。
藤本:Netflixのオリジナルの『喪う』って映画が、僕はめちゃくちゃ刺さって最高でした。
米津:『喪う』という。
林:どんな感じのお話なのか…。
藤本:父親が病気でもうすぐ死ぬことがわかって。娘2人が帰ってくるんですけど、父親と同居してる一人の娘が、すごいドラッグとかやってて、父親がこれから死ぬってのに、色々ヤンチャな感じなんですけど…。そういう話って、大体結末として父親の死を乗り越えて、娘たちが立ち直るっていう映画になると思うんですけど、僕、ある一つのシーンが刺さりまくって。“これは俺のために作られた映画だ!”って。
米津:へー。
藤本:たまにあるんですよ。俺を絶対喜ばせるために作られてる、みたいな。
米津:あはは。分かります、分かります。そういう霊感働く時ありますよね。
藤本:米津さんは?
米津:最近…結構直前まで忙しくてあんま見れてない、ってのはあるんですけど。小説になるんすけど、あの…。向坂くじらさんっていう作家さんの「いなくなくならなくならないで」っていう小説があって。確かこの間、芥川賞にノミネートされてたんですけど、それを読んだらすごく面白かったですね。親友同士の女子高生2人組のうちの一人が、なんか死んじゃったっていう。残された一人がすごく喪失感を抱えながら生きてたところ、なんか…。なんか生きてて。目の前に現れたっていう。えっ、あんた死んだんじゃないの、みたいな。いや全然生きてた…みたいな。で、その家に、住み込みに。金もないから住み込ましてくれ。女子高生じゃないですね、女子大生ですね。その2人の仲がいろいろ進展を遂げていって、ものすごいことになっていくっていう話なんですけど。なんでしょうね。この場で、あれの面白さを言語化ができないんですけど。
林:はい、本当にね。
米津:すごくこう。愛し合うが故に、どうしてもいなくなってほしいと思うような時ってあるよなっていう。
林:ほー。
米津:なんでしょうね。二律背反みたいなものが渦巻いていくっていう。なんかそういう話なんですよね。
藤本:なんか、でも米津さんの歌を聞いてると、そういうのをちゃんと言葉にしてるから。なんかやっぱり…。でも即興ではできないですよね。こういうのは。
米津:あーそうですね。
藤本:すごい自分の感じた感動とかが、あっ綺麗だなって思ったものを、そのすぐその場で言葉にすると、僕、めっちゃバカみたいな言葉になるんですよ。だから結構、でも米津さんも、すぐにはこう、言葉にするのって難しいっすよね?
米津:いやーそうなんですよね。やっぱり口下手っていう自覚があるし。すぐに言葉にしようとすると、それこそ本当にむちゃくちゃになる。酒飲んだりすると、それがストッパーなく出てきちゃって。その場がわやくちゃになるみたいなことが、よくあるんですよ。
林:なるほど。
藤本:わかります。
米津:だから、大体こういう真面目にしゃべんなきゃいけない時はもう、“あ〜”“う〜”みたいなフィラーがいっぱい出てくるっていう。これでよかったのかな?みたいな感じになってしまうっていうのは、すごくありますね。
藤本:俺も居酒屋のトイレとかで、なんかすごいクダらないこと話してるなって、俺、もう、相手の発言に対して20秒時止めれればもっと良いことを返せるのに。
米津:はいはいはい。
藤本:一瞬で返せって言われたら、俺も今米津さんと話してて、なんかもっと…米津さんにこう。“あ、藤本先生って賢いな!”みたいなことを思われたいから、もっといい語彙がないかなって思って出したいんですけど。なんか〝めっちゃ〟とか、〝すごい〟とか、すぐそっちになっちゃうんですよ。感動するものとか見ても。感動したものを表すために、いろんな表現をしたいのに。“いや〜すごいめっちゃ良かった”って、そういうのに落ち着いちゃうんですよ。
米津:いやー、わかりますわかります。
藤本:だからもっと、20秒僕、時間止めたいっす。米津さんの話が来たら止めて。類語辞典とかでこうワード調べて…。やりたいです本当に。
米津:分かります、すごく。
林:飲んでる時は結構思いのまましゃべって、それで逆に、こう思った通りのものが出る瞬間もあるじゃないですか。もう考えてきてるんですか?あれって。
藤本:酔ってる時に話してて、そん時考えもしないようなことを話して、それに整合性を持たせるために話していったら、なんか前から思ってたみたいなことを言ってるって時はあって。だからお酒って楽しいなって思います。
米津:お酒は楽しい。楽しいですよね、お酒。帰ったあと、めちゃくちゃ後悔するんですけどね。
藤本:そうですね。
林:休日とかあるときはどんなことをしてます?まとまった休日とかもし、長い休日使ってやってみたいこととかってあったりします?
米津:そうですね。でも…。休日あっても大体変わらない生活になっちゃうんですよね。あんまこう、旅行に行きたいっていう、そういう欲求も無いし。車とかも持ってない。どこにお金使うみたいなのもあんまりないので。気が付いたらゲームばっかやってるみたいなことがあったりとか。20代の頃は本当もう、とにかくお酒飲みに行くみたいな毎日を送ってたんですけど、30代になってあんまりそれもなくなってきて。なんかどうしようかなって思ってますね。
林:ツアーがある種、旅行みたいなもんですよね。
米津:あ、そうですね。
林:ずっと全国津々浦々の世界も回られていらっしゃるので。
米津:なんか新しく健康的な生活習慣みたいなものを獲得しなきゃいかんなっていう気持ちにはなってきていますね。
林:なるほど。藤本さん、どうですか?
藤本:僕あの、新宿の映画館に行って、映画館いっぱいあって、だいたい新宿内でやってない映画はほとんどないんで。そこで初日とかに見に行くんですけど、初日とか観に行くと本当びっくりするんですけど、ほかの映画の初日見てた人の“あ、またあの人いる”みたいな人がいるんです。
林:おー、映画好きがやっぱ集まってるから。
藤本:そう。で、あのアニメ映画には絶対いる人とかがいて。
米津:へー。
藤本:で、そういうのですごい、なんか仲間意識というか、そういうの感じながら映画を見て、ああ面白かったなーと思って。でも歌舞伎町とか怖くて。ピカデリーとか行く時、怖くて。非日常を体験できる。死の危険性というか、まぁ死なないけど。
米津:へー。あはは。
林:あはは。
藤本:暴力の危険性がありながら、俺はなんかエンタメを見に行くぞみたいな。コンビニとか入って、なんか目の前でこうタバコ吸ってる若者たちがいて、怖いと思いながら水買いに行ったりする。そういう感じ。
林:連載の合間でもできていらっしゃいますもんね。連載がちょっと落ち着かれたら、長めのお休みあると思うんですけど、何をやられたいとかあります?
藤本:大泉学園の映画館に行きたいですね。僕映画も好きですけど、映画見終わったあと休憩するのも好きで。大泉学園の近くに4階建てぐらいの商業施設があって、そこの4階にゲームセンターがあるんですけど、人が一人もいないんです、ゲームセンター。
米津:へー。
藤本:1人もいない。そこをなんか迷い込む感じで行くと、非日常を。
米津:なんかいいですね。
林:もうゲームセンターのオーナーの気持ちになっちゃう、俺。俺…俺の店だって。“一人もいないって言われてる!”ってなっちゃうから。気になっちゃうんですけど。
藤本:僕しかいない中華料理とかもあります。人いたら僕です、絶対。本当に僕しかいないんですよ。美味しいですけどね、すごい。
米津:いいですね、そういうところもねえ。
林:ありがとうございます。じゃあ作品にちょっと戻りますが、作品を作る中でどのようなプロセスを特に大切にされてますか?米津さんの場合はそのタイアップのために作る曲と、そうじゃない曲でちょっとアプローチ違いそうな気がしますけど?
米津:うーん、何でしょうね?自分で考えてみても、あんまり分かんなくて、それが。プロセス…。それこそアニメのための曲を作るときは、その作品に即してないと“大前提、良くないだろうな”というふうに思うし。個人的なものと、その作品とのちょうど重なる、ベン図の重なる部分みたいなものはいつも心がけてはいるし、その時々において、自分の中の方法論みたいなものは、あるにはあるんですけど。これって果たして本当か?みたいに思うこともよくあるんで、自分でも自分を信用してないというか。今、確固たるプロセスがあるかって言われると、“なんかよく分からん”っていう感じになるんですけど。
林:曲ごとに作り方が変わってるっていうか。
米津:変わってる…。そうですね。
林:歌詞から作る人とメロディから作る人って。
米津:ああ。
林:なんかそれもバラバラだったりされるんですかね。
米津:結構やっぱり変わりますね、それも。最近はトラックから作ることが多くなって。昔は、アコギで弾き語りで作ってたんですけど。 “その時々によって大事にするのものは全然違うよな”っていう感じがして。で、“自分で自分のことがよく分からないな” っていう感じがすごいすると言うか。変に考えすぎだからだと思うんですけど。“何かよく分かんねぇな”って感じになってますね。最近。
林:考え抜かないとたぶん作れないというか。
藤本:曲を聴くと考えられてる。すごい考えられてる。
林:すごい考え抜いて作っていらっしゃるのかなと思うんで、すごい潜んなきゃ作れないものなのかと思うので、大変なんだろうなと思っちゃうんですけど。
米津:あはは。そうですね。すっごいいろいろ考えて。これ考えてても埒あかないわってむちゃくちゃ勢いで作るっていう感じなことが、多いかもしんないですね。なんか、あの、夏休みの宿題が、できなかった人間なんですよ。
林:提出せずに終わる。
藤本:僕もです。世代だから。
米津:世代。
林:あはは。世代じゃなくて。世代じゃないと思うんですけど。
米津:最終日にまとめてやるっていう話は、よく友達とかでも聞くんですけど。俺出したことないんですよね。宿題を。いや、出したことないことはないか。やったことはあるんですけど。あの踏み倒してたんですよね、よく
藤本:すごい。
米津:とにかく、ものぐさな人間で、そもそも。なので、非常に効率の悪い生き方をしてるなっていう自覚があるというか。
林:でもちゃんと、タイアップ曲は締め切りが明確にあるから、もう締切には間に合うようになられたってことだと思うんで。
藤本:僕も効率悪いです。同じです、それも。うれしいです、だから。良かった。
林:ありがとうございます。藤本さん、作品作る中でどのプロセスを特に大切にされるとかあります?
藤本:ネームとか下書きとかペン入れとか、もうなんだろう、全部楽しいんで。なんか大切にしてるかどうか分かんないけど、まあ楽しくやってます。それ以上何もないんで。もう米津さんも同じで多分、その時にその例えば今から「じゃあ曲を作ってください」って言われたら、その時々で考えることが違うから。なんか難しい話っすよね。
米津:意外とそうなんですよね。難しいんですよね。
藤本:ただ、米津さんと僕で違うところって、僕はルーティンとしてこう、週に何回かこう、ネーム考えなきゃいけないのもあるから。多分僕の方が何かこう、自分の中で、“何かメソッドみたいなのがないといけない”と思うんですけど。僕も本当効率悪い人間なんで。漫画の枠線も今自分で引いてるし、そういうツールがあるのに。ツールのやり方を教わっても自分で引いてるんですけど、効率が悪いことが別に嫌いじゃないというか。何だろう?楽しかったりして。なんか自分ができないことの言い訳なんですけど。面倒くさくなることの言い訳を結構思いつくから、それが、この効率悪いことから抜け出せないというか。
米津:あー。いや、非常に気持ちが分かる気がしますね、それは。
藤本:今スマホ割れてるんですけど、なんか直しに行かないのは、“横の人にスマホ割れてるから見られないから”っていう。自分の中でこう構築して、絶対そんなことはなくて。そういうことで納得するのも結構好きで。なんだろう?さっき、このカフェのこの鉄の部分とか見てても、“めっちゃいいな”と思って。あの模様とか上のドライフラワーとか“めっちゃいいな”って思ってて。でも別にこれに統一性がないのと同じで、自分の行動にももっと、統一性があったら何時間か時間が空いて、その分映画とか見れるんでしょうけど。まとまらない部分、さっき言ったように、映画見てない休憩時間も僕は好きだからなんか。多分効率悪いことを良しとしちゃってるんだろうなと。多分米津さんも、さっき効率が悪いって言ったけど、たぶん効率よくしようとは思ってないと思うんですよね。
米津:フフフ。いや、めちゃくちゃよくわかりますね、その感覚。
藤本:僕も宿題、最後の日に全部。僕はやって、ちゃんと怒られるの嫌だから。やってました、僕は。
米津:なんかね、その効率を良くしようと、だからゲームとかやってて…。本当近々の話なんですけど、最近ソシャゲやってて。それリリース日からやってるんですよ。たまたまなんですけど、リリース日に発表されたのを知って。“あ、じゃあやってみよう!”と思ってやったら結構気に入って。なんか気に入ったもんだから、ソシャゲってよく、青天井のスコアアタックみたいなのがあって、ランキングが出るみたいな。“あれ?一位狙えるんじゃね?”みたいなのを思いはじめてやってみたんですけど。ソシャゲって体力が限界があるというか。時間で回復して行くから、無尽蔵に使えないっていうシステムがよくあって。って考えた時に、最初、別に“一位狙おう”とか思ってないから、普通に楽しくやってたんですよ。なんで、その体力の使い方もわりと、その時々に欲しかった能力とか上げるみたいな感じでやってて。“じゃあ一位狙おう”と思った頃には、時すでに遅しというか、本当に最初から効率的にやろうと思ってた人間にどう足掻いても勝てないんですよね、もう。なるほどなみたいな。 “本当にトップ獲るなら効率的にやんなきゃいけないんだな”とか思ったんだけれども。そもそも最初からトップ獲ろうと思って、攻略情報とか見てやってたら、“めちゃめちゃ途中で飽きちゃってただろうな”って思うんですよね。それ見ちゃったらもう、そこにたどり着くまでの道中がもう。
藤本:やられてる訳ですからね。
米津:そうそうそうそう。単純作業になっちゃうなっていうふうに思うし。そこにたどり着くことを目的としているのか、そこに辿り着くまでを重視するのかっていうのは、全然違うよなっていう。みたいなことをなんかなんとなく考えていたんですけど。だから効率的にやるのが苦手だし、まぁ、そういうところも割と自分で嫌いじゃないなって思うことは確かにあるかもしれないですね。
藤本:確かにそうですよね。ゲーム始める前の自分が、これから攻略見て、その通りにやることになるぞって思ったらやらないですよね。
米津:そうなんですよね。
林:作業に変わっちゃいますよね。
米津:うん。
林:じゃあ、米津さんから藤本さんに何かご質問があればぜひ。
米津:しょうもない質問でいいですか?
藤本:はい。
米津:たまに自分でも絵を描くことがあるんですけど。やっぱり音楽作ってる時より、とにかく体の負担がすごいんですよ。健康に気を遣ったりとかしてます?
藤本:僕、最近ダイエットはじめて。一日30分走ってるんですけど。
米津:おお。
藤本:それも別に自分では健康に気を使ってるっていうよりは、そのルームランナーの前に映画見れる画面つけてて。映画見ると、こう…シュシュシュとかシャドーボクシングしながら、映画の中で鬱憤を晴らしながら走ってて。別に健康に気をつけなくてはいけないわけではないですけど。米津さんは多分分かんない…。どんくらい酒飲むか分かんないですけど。
米津:ははは。
藤本:でもなんか。その趣味が偶然健康に良いものだったりすると、いいですよね。僕、あのちっちゃい頃からちょっと多分…。これは乗らないと思うんですけど、あの、オシッコ我慢するのが好きで。
林:ははは。
藤本:あのそれで僕、頻尿になってるんですよ。ちっちゃい頃。
米津:はいはい。
藤本:で、その我慢してるときは別に健康とか考えてなかったんですけど、僕それで頻尿だったせいで、映画見る前、本当水を一切飲まないで行かないと、途中オシッコしちゃうから。僕、今、トイレ行きたいんですけど、一旦。これは我慢したくなくて、こういう状況では我慢したくないんだよ。トイレ行っていいですか?
林:あはは。
米津:あはは。
藤本:みんながいる状況で我慢するの好きじゃないんですよ。
林:ちょっとじゃあ行ってください。ちょっと一旦休憩挟みましょう。じゃあ緩やかに続きを。あの米津さんから今質問いただいたんで、逆にあの藤本さんから米津さんにご質問が。
藤本:米津さんの歌って、「Lemon」以外だと、米津さん側から離れていく。女性と男性。米津さんがいたら、“米津さんから離れていく話が多いかな?”って思って。それって何かその原体験があるのかなとか。
米津:あー。
藤本:もちろん、その明確に米津さんから、“側から離れていくのかな?どうだろう?”みたいな曲もあるんですけど。なんか…何かの提言から来てるのかなって。
米津:あ、それ初めて言われましたね。そういう。確かに、そんな感じはあるかもしんないですよね。なんでだろうなあ?
藤本:で、僕は米津さん考察してるんですけど。
米津:ははは。
藤本:こう、もしかしたらこれは、この相手っていうのは全部、初音ミクのことで。米津さんが歌い始めて使わなくなったことへの何かその、“何かなのかな?”とかって思ったけど。その、米津さんがまず歌う前の、「vivi」の “愛してるよ ビビ”「vivi」でも、こっち側から離れていってるから、なんか“初音ミクではないのかな?”って。なんかあるのかな?そういうの。原体験?
米津:あー初音ミク…。
藤本:例えば衝撃を受けた作品があって。それが主人公から離れていく作品だったから、その何かを追っているのかなとか?
米津:なんでしょうね。でも本当に今の…それを言われるまで、今の今まであんまり考えたこともなかったので、何かあるのかなと今考えてはいるんですけど、なんでしょうね?でも、距離が近すぎるのがものすごく苦手っていうのは、生来的にそういう気質の人間であるっていうのは、1つあるのかなとは思うんですよね。あんまりこう、近すぎると…。例えば、飲み会とか行って。で、すげー楽しく盛り上がって。で、盛り上がったし、みんな明日も空いてるんだったら、そのまま誰かの家に泊まって、一緒に、まあ例えば、“ディズニーでも行こうよ!”みたいな。そういうなんか、ノリがたまにあったりするんですけど。それが本当に嫌なんですよ。なんか、1回帰りたいんですよ。絶対。
藤本:それはそうですよね。
米津:そう。なんでしょうね。 “1回帰って欲しい!”みたいな気持ちがすごいあって。
林:なるほど。
米津:本当にお泊り会みたいな、友達と2~3に渡って予定があったとしても、絶対に1回帰ってほしいし、帰りたい、みたいな気持ちがすごく強くあって。
藤本:なるほど。
林:あ〜なるほど。
米津:そうっすね。全然ドラマチックでもなんでもない理由。
藤本:なんかそれを聞くと。なるほど。
林:気質というか、本心というかね。過ごし方の問題というか。
米津:うーん…。ひとりの時間がないと耐えられない。パーソナルスペースの問題なのかな?なんかもっとかっこいい何かがあればいいんですけど。
藤本:昔いた女がみたいな?
米津:そうそう。思いつくのが、そんぐらいしかないですね。
藤本:飲んだ次の日に、ディズニーは行きたくないですよね。
林:あはは。
米津:あはは。そうですね。“ちょっと頼むから一回帰らせてくれ”みたいな気持ちになるけど。はい。よくあります。
藤本:ありがとうございます。
林:改めまして、ここから劇場版『チェンソーマン レゼ篇』そして主題歌について聞かせていただければと思いますが、米津さんは“原作のレゼが写ってるページを四六時中開きっぱなしにして睨みつけながら作りました”という、解禁時にコメントがありました。レゼというキャラクターをどのように捉えていらっしゃいますか?
米津:なんと言えばいいんでしょうね。睨みつけてたのが。この、ここのページ。
林:コミックス6巻。
藤本:あーはいはい。
米津:これをずっと見ながら、中でもその、「JANE DOE」を作ってる時は、ずっとこのページを開きっぱなしにして、やってたんですよね。
林:コミックス6巻。“私も学校いった事なかったの”と、言った後にレゼが横たわるシーンですね。はい。
米津:とにかく“好きな子になろう”みたいな気持ちがすごい強くあったんですよ、曲を作るにあたって。昨今の言葉で言うなら、推しというかね。そういう意識をレゼに対して強く持とうっていう、そういう感じで制作をしてたんですよね。
林:はい。
米津:なのでこう、とにかく…。自分にとってはもう、高校生の頃好きだった女の子みたいな。フフフ、そういう印象になってしまっているかもしれないですね。割と客観的に見てどうこうっていうより。うん。たまに卒アル見て思い出すみたいな。なんでしょうね。そういう感じの存在になってるのかもしれないなという気持ちがすごい。
林:それはその作るために深く知っていく過程で、好きになって行ってしまったのか、好きになることで、作れるっていうなんか核心があって好きになっていったのか?
米津:そうですね。レゼのための映画であって…そこの曲を作るのであれば。プラス、そういう工程がないと「KICK BACK 2」を作ってしまうような気もする。それだけは絶対やりたくなかったことだったんで。なんかこう…とにかく。顔、姿を眺めて。“どうしよう?”って思っているうちに。“好きになるべきだ!”みたいな感じになっていったのをすごく覚えていますね。
林:なるほど。ありがとうございます。藤本さんにとって、レゼっていうキャラクターはどんな存在でしょうか。
藤本:好きな要素を集めてって作ったキャラクターです。
林:藤本さん自身が好きなそのキャラクターの要素を。
藤本:ビジュアルでも内面的にも。
林:例えば、ここがレゼのすごい好きなところってあったりしますかね。具体で言うと。
藤本:レゼの場合は、デンジにちゃんと明確に矢印向けてるけど。その子の天性のなんか、そういう気質が、“俺のこと好きなんじゃないかな?”っていうふうに思わせるような、そういう子っていると思うんですけど。そういうのが好きなんで。そういうのだったり、実はすごい暴力的な面も持ってて。それが見え隠れするのが、僕はすごい好きです。
林:うんうん。なんか書いてる時に、印象的だったこととかって覚えてらっしゃったりします?レゼ篇は。まあ多分相当お忙しい時期と言うか。
藤本:印象的…なんかあったかな?覚えてないですね。
林:毎週打ち合わせする度に、寝れないこと以外は大丈夫です、と仰ってた記憶が。
藤本:本当眠れなくて。いや、その不眠とかっていうより忙しくて。
林:物理的に本当に。
藤本:寝れなくて、それ。辛かったです。
林:今回の主題歌「IRIS OUT」と、エンディング・テーマの「JANE DOE」。2曲を書き下ろしていただきましたが、聞いた時の感想や何か印象に残ってる歌詞、フレーズなどありましたら、あの藤本さんにもし、お伺いできたらと思うんですけれども。
藤本:僕聞かないようにしてて、映画でその中の文脈で聞かないと、それは観客と同じじゃないんじゃないかなって思って。特に僕あの、『君たちはどう生きるか』見た時に、“よかった、これ「地球儀」を最初に聞いてなくて。”と思って。聞いた後見たら、もう完璧にその「地球儀」の中に書かれている目線でしか、『君たちはどう生きるか』を見れないなって思ったから。今回に関してはこう聞かない。避けるようにしてますね。楽しみにしてます。
林:いやもう。正しい、正しいというかね。感想は聞いた後ということでね。
藤本:予告とかも見ないようにするんで、映画は。楽しみたいので。
林:劇場でね。知りたいっていう。僕はめちゃくちゃいい曲をありがとうございますというふうに思ってるんですけども。
藤本:ありがとうございます。
林:はい。お客様の反応もめちゃくちゃ楽しみではあるんですけども。いろいろとお話を伺いして参りましたが、締めのお時間ということで、お知らせのコーナーをしつつ、おふたりのメッセージを聞こうと思ってるんですけども。お知らせをさせてください。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、全国の映画館にて絶賛公開中。劇場の詳しい情報は、オフィシャルホームページをご覧ください。そして主題歌「IRIS OUT」。そしてエンディング・テーマ「JANE DOE」。それぞれストリーミング配信中。さらにパッケージが9月24日に発売となっております。こちらは米津さんのオフィシャルホームページ、SNSをチェックしてみてください。
それでは最後にお2人からそれぞれお聞きになってる皆さん宛てにメッセージをいただければと思います。米津さん、お願いいたします。
米津:アニメ『チェンソーマン』に関わらせてもらうのが、今回で2度目になって。非常に光栄で嬉しく思っています。「KICK BACK」も。あれを作らせてもらったことによって、ものすごく自分にとっても大きな経験になったし。今回も。『チェンソーマン』がなければ、作れなかった2曲が出来上がったので、すごく光栄で、“映画を見るのが、ただ一重に楽しみ”っていう感じですね。よろしくお願いします。
藤本:ありがとうございます。
林:ありがとうございます。では藤本先生、よろしくお願いします。
藤本:1つの、その『チェンソーマン』のアニメから続いてる話だと思うんですけれども。多分“前を知らなくてもギリ見れるんじゃないかな?”って思ってて。
林:いや、見れると思いますよ。1巻から5巻読まなくても、見れる。
藤本:すごい気軽に、多分すごく動くと思うんで。そういう感じで。なんかアクション、すごいアクション見たいなって。ぐらいの感覚でもすごく楽しめると思うので、ぜひ観に来てください。よろしくお願いします。
林:はい!では、お2人とも本日はありがとうございました。お届けしたのは、藤本タツキ先生と米津玄師さんでした。ありがとうございました。
藤本:ありがとうございました。
米津:ありがとうございました。